【製薬】中分子医薬品って何が良いの?

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 こんにちは。

 僕は,前職の関わりもありライフサイエンスの発展に興味を持っています。昨今,技術の発展がめざましく,抗体医薬品以外にiPS細胞や核酸医薬品など多くの有望な技術が開発されています。その中でも「中分子医薬品」というのが最近脚光を浴びており,少し気になったので自分の勉強がてら調べてみました。

中分子医薬品って何?

 中分子医薬品は分子量が500〜2000程度の化合物を指します。中分子の化合物と言ってもいくつかあるそうですが,その中でも現在は「ペプチド医薬」というものが注目されています。

なぜ「ペプチド医薬」が注目され始めたのか?

 ペプチドリームという会社が今までになかった有機合成技術を確立し,「環状のペプチド化合物」を量産できるようになったからです。これにより,ペプチドリームは多様な環状ペプチドのライブラリを作り出すことに成功したそうです。ニュースでもよく見かけると思いますが,多くの製薬企業がこの技術・ライブラリを使用するためにペプチドリーム社と提携を始めています。

なぜ「環状ペプチド」が良いのか?

 まず,ペプチドは鎖状と環状の二つがあります。鎖状はアミノ酸が横に繋がった状態,環状は名前の通りアミノ酸が輪を作っている状態になります。輪の状態のペプチドは,鎖状のペプチドよりも安定性が高いことが知られており,それによって細胞膜を透過しやすいのが特徴です。安定の状態のまま細胞膜を通過し,細胞内に存在する疾患の原因となる標的タンパク質に結合できるというのが環状ペプチドの良い点であり,今後期待できるところのようです。

今までの薬との違いは?

 今のところ,薬は低分子医薬品とバイオ医薬品(抗体医薬品等)の2種類があります。

 低分子医薬品は,みなさんが普段飲む薬を考えてもらえば想像がしやすいのではないでしょうか。例えば,市販薬のアスピリンなどがあげられます。低分子医薬品は,分子量が〜500程度で容易に細胞膜を通過することができます。副作用が起き易いですが,安価で購入できるのが特徴です。

 バイオ医薬品は,抗がん剤の薬などが代表例です。病院で処方されない限り,日常生活ではあまり見かけないかもしれません。抗体医薬品は分子量が15万程度でかなり大きく,細胞膜を通過できません。一方で特異性が高く,副作用が少ないのが特徴です。また,かなり高価な薬剤としても有名です。最近で言えば,オプジーボの薬価問題なのがありました。

 よって,細胞膜を通過できて,特異性が高く,製造コストも抑えられる中分子医薬品はこれまでの創薬に比べてメリットが多く,また細胞内に存在するこれまでに捉えられなかった標的タンパク質をターゲットとして創薬できるということは,多くの可能性が秘められているということになります。

中分子医薬品を使って何ができる?

 すでに存在する中分子医薬品の代表例としてシクロスポリンがあります。wikiを参照ください。

ja.wikipedia.or

 構造を見ていただければわかる通り,アミノ酸が繋がって環状の構造になっていますね。これが,ペプチド医薬品です。

 ペプチド医薬品を使って細胞の中に到達できると何ができるようになるかというと,例えばガン細胞は細胞内で働いている正常システムに逆らうことで増殖ができるようになります。本来,細胞に何か間違ったことが起こると正常システムが働き,細胞が自滅するようになるのですが,ガン細胞では自滅せず,増殖してしまいます。その正常システムを妨げるガン細胞特有の原因物質をターゲットとして,細胞内に到達することができるペプチド医薬品を創薬すれば今後抗がん剤として使えるのではないか?といったことが考えられるようになるそうです。

 以上,かなり簡単ですが整理してみました。もっと詳しくわかり次第updateしていきたいと思っています。参考になれば幸いです!では。